猫の毛柄と性格は関係があるのではないか、と考えられています。さまざまな調査によると「茶トラは甘えん坊」など、一定の傾向はあるようです。
たしかに猫の飼い主同士で話をしていると、柄ごとのキャラクターが似ていると思うときがあるのではないでしょうか。
そこで今回は、専門家による研究結果や資料をもとに、猫の毛柄と性格について解説します。ご自分の愛猫にも当てはめて観察してみてください。
この記事の目次
猫の毛柄と性格は関係ある?

猫の毛柄と性格は、なんとなくでも関係があるのではないかと思う飼い主さんもいるでしょう。実際、動物学者の大石孝雄先生は、研究の結果、猫の毛柄と猫の性格は一致する傾向があるとしています。
2022年には大石先生の研究をもとに、法政大学で猫の毛柄と性格の調査が実施されました。猫432匹の飼い主に対して、猫の性格や外見など26個の質問を行ったものです。
得られた回答から「外向性」「温厚」「警戒、人慣れしない」「頭の良さ」「自己中心性」「こだわり」を抽出し、検討しました。
その結果、例えば黒猫の場合は「警戒、人慣れしない」「頭がよい」などの得点が高く、「温厚」の得点が低いなどの傾向が表れたそうです。
毛柄を決めるのは遺伝子

人が親の遺伝子によってさまざまな特徴を受け継ぐように、猫の毛柄も遺伝子によって決まります。ちょっと難しい話ですが、毛色を決める遺伝子についてみてみましょう。
猫の祖先に最も近い「キジトラ」
日本の家庭で飼われている私たちの身近にいる猫の祖先は、中東の砂漠地帯にいる「リビアヤマネコ」だといわれています。実はリビアヤマネコの毛色や柄を引き継いでいるのが「キジトラ」なのです。
そして、キジトラに銀の毛色を作る遺伝子を持っている猫の遺伝子が組み合わさることで、サバトラ猫が誕生します。また、茶色の遺伝子が組み合わされば茶トラ猫が出現します。こうしてさまざまな毛柄の猫が生まれてくるのです。
遺伝するはずなのに両親に似ない子猫が生まれるのは?
遺伝子によって毛色や毛柄が違う猫が生まれることはわかりました。そもそも生きものは人間を含め、両親から遺伝子を1つずつ受け継ぎます。つまり、それぞれの遺伝子をペアで持つのです。
ところが、両親猫に似ても似つかない子猫が生まれることがあります。遺伝子の特性が子に現れないケースです。これは、遺伝子に顕性遺伝子(優性)と潜性遺伝子(劣性)の2種類があるためなのです。
顕性遺伝子(優性)は1つでもあればその毛色や柄が現れ、潜性遺伝子(劣性)は2つ揃わないとその毛色や柄は現れません。そのため、両親を飛び越えて祖父母の潜性遺伝子を子猫が受け継ぐというパターンも生じます。
つまり、子猫の毛柄は両親とまったく異なるように見えても、実は祖父母のどちらかと同じだったということがあり得るのです。
毛色や毛柄に影響する遺伝子
現在、白や茶など、猫の毛色や縞、スポットなど柄を決める、次のような遺伝子が確認されています。顕性遺伝子や潜性遺伝子が組み合わさって、白猫や茶トラなど、さまざまな毛色や柄の猫が生み出されるのです。
- W遺伝子(ホワイト):白色を作る
- O遺伝子(オレンジ):茶色を作る
- A遺伝子(アグーチ):毛そのものに縞模様を作る
- B遺伝子(ブラック):黒色を作る
- C遺伝子(カラー):体の先に色をつける
- T遺伝子(タビー):体に縞模様を作る
- D遺伝子(ダイリュート):毛色を薄くする
- I遺伝子(インヒビター):銀色を作る
- S遺伝子(スポッティング):体の一部を白くする
環境も影響する

毛柄と性格の傾向が一致するといっても、すべてに当てはまるわけではありません。例えば、人に飼われている猫か野良猫かといった環境によっても、性格やキャラクターは異なります。
さらに「一人暮らしの人に飼われている」「大家族の家で飼われている」「都会の家で飼われている」など、さまざまな要因も影響するのです。
母猫が妊娠中に飼い猫だったか、野良猫だったかといった状況によっても、変わってくるでしょう。その結果、「人懐こい毛柄だと聞いたのに、全然懐かない」「ツンデレのはずなのに、べったり」といったこともあり得るのです。
猫の毛色と予想される性格

ここからは、研究結果などからわかっている猫の毛柄と性格についてご紹介します。もちろん、性格は毛柄だけで決まるものではありません。
環境の影響など、その子によって個性があるので「うちの子に当てはまらない」とガッカリしないようにしましょう。決めつけないことも大切ですよ。
白色

白猫は、頭がよい傾向があるといわれています。やや慎重で、簡単に人に懐かないところもあるようです。これは、白猫が野生の状況で外にいると外敵から目立つため、慎重な行動をするためとも考えられます。飼い主さんには懐くものの、それ以外の人には距離を置くようです。
筆者が子どもだったころ、祖母の家にはオッドアイの真っ白な猫がいました。小さな子が苦手だったのだと思いますが、何日滞在しても一切心を開きませんでした。
ただ、昼は知らんぷりなのに、夜中になると猫嫌いの兄が寝ているところにわざわざ忍び込んで、足をひっかくといったいたずらもしていました。
黒色

黒猫は一見ミステリアスでツンとしている印象ですが、黒猫は甘えん坊な子が多いといわれています。おもちゃやキャットタワーなどで遊ぶのも大好きで、攻撃性も控えめ。猫初心者でも飼いやすいといえるでしょう。
実は夏目漱石が飼っていた猫も黒猫で、大変かわいがっていたようです。猫が亡くなったときにはお墓を作り、命日には毎年鰹節ご飯と鮭を一切れお供えしていたと、自身のエッセイでも綴っています。
ちなみに、白地に黒い部分があるハチワレやブチ、足や口元だけが白い子なども黒猫の仲間です。
キジトラ

キジトラは独立心が強く、猫の中でも、先祖であるリビアヤマネコに近いため、より野生的な子が多いようです。特にキジトラ模様は、自然の風景の中に身を隠すのにぴったり。運動神経もよく狩りも上手な子が多くいます。
ツンデレなところも魅力で、一度飼い猫になると飼い主さんにべったりになりやすい猫です。
キジトラ仲間には白とキジトラのバリエーションもあります。白地にキジトラ模様がある子、背中にキジトラ模様が入っていてお腹や足が白い子などです。活発ながら人懐こい傾向があります。
筆者が大学生の頃に飼っていた猫は、白とキジトラのミックスでした。人懐こく勝手についてきて一緒に家の中に入り、そのままうちの猫になった経緯があります。体調不良の家族がいると、回復するまでずっと付き添ってくれました。
茶トラ

茶トラは甘えん坊で人懐こく、活発な子が多いようです。海外では「オレンジキャット」「ジンジャーキャット」とも呼ばれています。明るい性格で社交的な面もあるため、猫を初めて飼う人にもおすすめです。
オスが8割を占めるといわれていますが、筆者が飼った2匹の茶トラはどちらもメスでした。1匹はおとなしく、大変おだやかでした。ただ、もう1匹のほうはあまりにも活発すぎて、ちょっと苦労した覚えがあります。人懐こい点は共通していました。
三毛猫

毛色は白・茶・黒の3色です。ツンデレでマイペース、少しわがままな傾向があります。神経質なところもあるようですが、慣れると飼い主さんには甘えん坊な一面を見せるのが魅力的。「猫のわがままに振り回されたい」という人にもおすすめです。
三毛猫は茶色の部分が縞になっていたり、オレンジがかっていたりと、さまざまな模様があります。遺伝子の関係で、三毛猫はオスがほとんど存在しないことでも知られています。
サバトラ

サバトラは、キジトラの色をシルバーと黒にしたような模様が特徴です。魚のサバの模様に似ているため「サバトラ」と呼ばれています。
屋外ではキジトラに比べて色が明るく、外敵から目立つため警戒心は強めです。逆に安心できる環境を求めるからこそ、人懐こい面があるといえます。ただし、来客などは苦手な子が多く、多頭飼いにも向いていないでしょう。
サビ

毛色は黒(キジ)と茶の2色で、「二毛猫」と呼ばれることがあります。全体的に縞模様が入っているサビ猫は、「麦わら猫」と呼ばれることも。
三毛猫と同様にメスが多く、気まぐれで警戒心が強い傾向にあります。そのため「ツンデレでわがままな女の子」がサビ猫の特徴です。賢いため、知育おもちゃなどを与えて一緒に遊ぶと、よく慣れてくれるでしょう。
まとめ

猫の毛柄によって、それぞれ特徴的な性格があるといわれています。
実際に調査している研究者も多く、「白猫は頭がよく慎重」、「黒猫は甘えん坊」など、ある程度傾向があるのは事実です。猫の祖先であるリビアヤマネコに近いキジトラは野生的で、茶トラ猫は人懐こい、三毛猫はツンデレなどとされています。
愛猫やお友だちの猫を観察してチェックしてみてください。もちろん毛色だけでなく、環境などにも性格は左右されるため、絶対とは言い切れません。決めつけずに、愛猫のあるがままを受け止めてくださいね。






































