純血種の猫は発症しやすい?代表的な遺伝性疾患を5つ紹介

2025.07.13
純血種の猫は発症しやすい?代表的な遺伝性疾患を5つ紹介

雑種の猫と比べると、純血種の猫は病気にかかりやすいと聞いたことがあるかもしれません。これは、純血種では限られた血統同士の交配が行われることが多く、その結果として遺伝子の多様性が低くなることが原因の一つと考えられます。

猫種によってかかりやすい病気はさまざまですが、純血種の猫が発症しやすい遺伝性疾患にはどのようなものがあるのでしょうか。今回は、代表的な遺伝性疾患を紹介していきます。

この記事の目次

遺伝性疾患とは

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遺伝性疾患とは、親から受け継いだ遺伝子の異常によって生じる病気のことです。

遺伝性疾患は、生まれてすぐに症状が出る場合もありますが、少し時間が経ってから発症することもあります。心配な場合は、いくつかの遺伝性疾患について、遺伝子検査によって発症の可能性を調べることができます。

遺伝子の多様性の低下の影響

純血種に遺伝性疾患が多い理由の一つは、種の特徴を維持するために血統が限られた個体間で交配が行われることにあります。

近縁の交配は、一度発生した病気の原因遺伝子を排除しにくく、特に突然変異によって生まれた特徴を人為的に固定化しようとする場合、血筋が近くなることで、隠れていた原因遺伝子が顕在化しやすくなることがあります。

これは猫に限った話ではなく、犬でも同じです。そのため、猫でも犬でも、ブリーダーから譲ってもらう場合は、そのブリーダーがどこまで遺伝に関する知識を持ち、適切な繁殖管理をしているかをしっかり見極めることが重要です。

代表的な遺伝性疾患

ピルビン酸キナーゼ欠損症

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なかなか馴染みのない病名かもしれませんが、ピルビン酸キナーゼ欠損症とは、赤血球の中にある「ピルビン酸キナーゼ」という酵素が欠損していることによって起こる遺伝性の貧血疾患です。ピルビン酸キナーゼは、赤血球がエネルギーを作り出すために欠かせないもので、不足すると赤血球の寿命が短くなり、慢性的な貧血を引き起こします

ピルビン酸キナーゼ欠損症には予防法や根本的な治療法がなく、一度発症すると症状が悪化していきます。治療は対症療法が中心ですが、重症化すると寿命は4~5年程度とされています。

ピルビン酸キナーゼ欠損症の主な初期症状は以下の通りです。

  • 運動をしたがらない
  • 元気がない、疲れやすい
  • 粘膜が青白い(まぶたの裏、口の中など)
  • 頻脈
  • 貧血
  • 脾腫、肝臓腫大
  • 黄疸 など

代表的なかかりやすい猫種

アビシニアン、ソマリ、ベンガル、シンガプーラ、ノルウェージャンフォレストキャットなど

多発性嚢胞腎(のうほうじん)

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多発性嚢胞腎とは、腎臓の中に嚢胞と呼ばれる液体の詰まった袋が多数形成され、時間とともに徐々に大きくなることで腎臓の機能が低下してしまう遺伝性の病気です。

幼い頃から緩やかに進行していき、7〜10歳ごろに腎不全を発症するケースが多く見られます。初期には目立った症状が出にくいため、飼い主さんが気づかないまま進行してしまうことも珍しくありません。

多発性嚢胞腎は、遺伝子の異常によって発症する遺伝性疾患であり、片方の親猫が多発性嚢胞腎の原因遺伝子変異を持っている場合、子猫が発症する確率は50%以上とされています。

予防接種や生活習慣での予防はできませんが、繁殖前に遺伝子検査を行うことで、発症リスクのある子猫の誕生を防ぐことができます。

多発性嚢胞腎の症状は以下の通りです。

  • 食欲不振
  • 多飲多尿
  • 体重減少

代表的なかかりやすい猫種

ペルシャ、アメリカン・ショートヘア、スコティッシュ・フォールド

肥大型心筋症

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肥大型心筋症は、心室(特に左心室)の壁が異常に厚くなることで心臓の機能に障害が現れる病気です。

厚くなった心筋によって心室内のスペースが狭くなり、十分な血液をためることができなくなるため、全身に送り出す血液の量も減少します。肥大型心筋症が進行すると、血液の流れが滞り、心臓内に血栓ができやすくなり、命の危険もあります。

肥大型心筋症も根本的な治療法はないため、なるべく早期に発見することが望ましく、対症療法によって心臓への負担を軽減することが重要です。

初期症状は以下の通りです。

  • 息切れ
  • 呼吸困難
  • 口で息をする

代表的ななりやすい猫種

メインクーン、ペルシャ

骨軟骨形成不全症

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「骨軟骨形成不全症」は、スコティッシュフォールドに特有の遺伝性疾患で、骨や軟骨の発達に異常が起きることで、関節や骨に痛みや変形が生じる病気です。

スコティッシュフォールドの特徴である「折れ耳」は、軟骨の形成異常によって生じる形質です。

骨軟骨形成不全症を発症すると、手足やしっぽの関節部分に「骨瘤(こつりゅう)」と呼ばれる骨や軟骨のこぶができ、それが痛みの原因となります。

軽度であれば「他の猫より大人しいな、あまり動かないな」程度で済みますが、症状が進行すると歩くことが困難になるなど、日常生活に大きな支障をきたすようになります。

主な初期症状は以下の通りです。

  • 関節が腫れる
  • 変な歩き方をする
  • しっぽが短く変形する
  • 足や手を痛がる
  • ジャンプなど激しい動きをしなくなる…など

代表的なかかりやすい猫種

スコティッシュフォールド

筋ジストロフィー

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筋ジストロフィーとは、筋肉の正常な構造と機能を保つために重要なタンパク質「ジストロフィン」が遺伝的に欠損または異常であることにより、全身の筋肉が徐々に萎縮・変性していく進行性の遺伝性疾患です。

発症すると確実に進行するため、徐々に症状が重くなり、最終的には動けなくなってしまいます。予防法や完全な根本的な治療法は見つかっておらず、進行を遅らせ、なるべく苦痛を緩和させてあげることが必要です。

筋ジストロフィーは幼猫期に発症することが多く、進行性であるため時間の経過とともに症状が悪化します。特にオスがかかりやすいとされています。

主な症状は以下の通りです。

  • 筋肉が硬くなっている
  • 筋肉が震えている
  • 手足が肥大化している
  • 舌が肥大化している
  • よだれを垂らしやすい
  • 不自然な歩き方…など

代表的なかかりやすい猫種

短毛種、デボンレックス

気をつけるべきこと

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繰り返しになってしまいますが、猫種によって程度の差はあれど、純血種には遺伝性疾患のリスクがあります。

飼い始めてから思いがけない病気やトラブルに直面し、飼い主も猫もつらい思いをしないためには、特定の猫種を迎える前に、その猫種に多い病気や性質について正しい知識を持つことがとても重要です。

また、たとえ遺伝性疾患のリスクが高い猫種であっても、発症をできるだけ防ぐために、健全な交配を心がけている良心的なブリーダーも存在します。

猫の遺伝性疾患に関しては、犬に比べてまだ研究が十分に進んでいない面もあります。だからこそ、飼い主が「知らないまま飼わない」ことを意識し、一歩踏み込んだ知識を持つことが、猫たちの健康や福祉につながる大切な一歩になるのではないでしょうか。

スコティッシュフォールドの例

例えば、スコティッシュフォールドであれば、親が「折れ耳×折れ耳」の交配から生まれた子は高確率で骨軟骨形成不全症を発症することがわかっています。飼う前に両親とも折れ耳でないことを確かめた方が良いでしょう。

終わりに

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猫を迎えたいと考えたとき、保護猫には「一人暮らしNG」などの条件があることも多く、やむを得ずペットショップを選ぶ方もまだ多くいらっしゃいます。

ペットショップは比較的お迎えのハードルが低いため、「一目惚れ」だけで決めてしまうこともあるかもしれませんが、その子の一生を引き受けるという覚悟を持って迎えることが大切です。

猫を飼い始めてから困らないためにも、できれば飼う前の段階から、猫種ごとの性格やかかりやすい病気などの特徴をしっかり学んでおきましょう。

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