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ねこ健康

【獣医師監修】アビシニアンの6つの好発疾患と適切な飼育環境

相澤 啓介 獣医師

野性味のある見た目と美しい毛並みで人気の猫種、アビシニアン。
クールでキリッとした顔立ちをしていますが、性格は甘えん坊で好奇心が旺盛なところも人気のポイントです。

一方で、アビシニアンには、遺伝的に気をつけなければならない疾患がいくつかあることをご存知でしょうか。

今回の記事では、アビシニアンの好発疾患と飼育環境について獣医師が詳しく解説します。

アビシニアンの基本情報


アビシニアンの基本的な情報を簡単にまとめました。

原産国
諸説あるが、エジプトやイギリスが有力
体重
2.5~4.5キロ
ボディタイプ
フォーリン。しなやかで筋肉質、スマートな体型。
顔の特徴
大きなアーモンドアイにクレオパトララインが相まって、目力が強い。「クレオパトラが愛した猫」とも言われる。
被毛
短毛。ティックドタビー(一本一本の毛が複数の色でできている)が美しい。
性格
甘えん坊で活発、好奇心が旺盛。

アビシニアンの好発疾患


アビシニアンの血統には、特徴的な遺伝性疾患が存在します。
その代表的なものが、「ピルビン酸キナーゼ欠損症」ですが、他にも知っておきたい疾患があります。
順番に見ていきましょう。

1. ピルビン酸キナーゼ欠損症

【症状】
貧血、運動不耐性(疲れやすい)、頻脈など
【原因】
「ピルビン酸キナーゼ」という酵素の、遺伝的欠損による溶血性貧血
【備考】
アビシニアンでは遺伝子変異が報告されているため、遺伝子検査が可能。

2. 進行性網膜萎縮

【症状】
夜盲、視覚異常、失明など
【原因】
遺伝性の網膜症
【備考】
特異的な治療法はなく、早期発見による生活水準の維持が課題となる。

3. 慢性腎不全

【症状】
多飲多尿、頻尿、尿が薄い、貧血、食欲不振、嘔吐、口内炎など
【原因】
長期にわたる腎臓への負担、腎毒性物質、腎臓の炎症、感染症、腫瘍など
【備考】
腎不全の進行により尿毒症、腎性貧血などが発現する。

4. 甲状腺機能亢進症

【症状】
体重減少、多食、嘔吐、下痢、多飲多尿、攻撃性の増加、脱毛、頻脈など
【原因】
猫の場合は非腫瘍性の過形成が原因のことが多い。甲状腺癌が原因のものは全体のわずか1〜2%という報告もある。
【備考】
高齢の猫では最も一般的な内分泌疾患である。

5. 細菌性尿路感染

【症状】
頻尿、有痛性排尿、血尿など
【原因】
尿の残留、尿結石、腎不全による尿組成の変化、尿糖の排泄など
【備考】
放置すると細菌が膀胱から腎臓へ感染することもあり、危険である。

6. 重症筋無力症

【症状】
脱力、吐出、発生障害(鳴き声がかすれる)、嚥下障害、瞬きの異常など
【原因】
神経と筋肉の伝達に異常が起こり、四肢や顔面の筋肉が動かなくなることによる。
【備考】
巨大食道症を併発することが多く、吐出などの症状が見られる。またその場合、誤嚥性肺炎には十分な注意が必要。

アビシニアンのための飼育環境

それぞれの猫に適した飼育環境を整えることで、病気の早期発見や早期治療に繋がることがあります。

アビシニアンと一緒に暮らす上では、どのような環境が推奨されるのでしょうか?ここでは、病気以外でも、日頃から注意したいことをご紹介します。

活発で運動量は多め

アビシニアンには筋肉質な子が多く、その分必要な運動量も多くなります。
一緒に遊んであげる時間を作ることや、キャットタワーを設置するなどしてひとりの時も退屈しないような工夫が必要です。

運動不足は肥満の原因となり、肥満は様々な病気の原因となるので注意しましょう。

好奇心が旺盛なため、誤飲や脱走に注意

飲み込むと危険なもの(尖ったもの、小さなプラスチック、チョコレートなどの毒物など)は、猫の手の届かない引き出しの中などにしまいましょう。

また、ドアを開けた隙に外に飛び出してしまわないよう、出入りには十分に気をつけ、もしもの時のためにマイクロチップの挿入も検討しましょう。

トイレはいつも清潔に

アビシニアンによく見られる疾患として細菌性膀胱炎がありますが、これはトイレの衛生環境も関係しています。こまめにトイレを掃除しましょう。

抜け毛対策のブラッシング

アビシニアンは短毛ですが、換毛期には非常に多くの毛が抜けます。大量の抜け毛は毛球症(グルーミングなどによって口から入った毛玉が腸を閉塞する病気)の原因にもなります。

愛猫とのコミュニケーションにもなりますし、定期的にブラッシングをしてあげましょう。

定期的な健康診断を

貧血、腎機能、甲状腺機能など、アビシニアンには定期的にチェックすべき項目があります。
その子の性格(病院に行くことを極端に嫌がるなど)にもよりますが、半年〜1年に1回の検診をオススメします。

アビシニアンは凶暴化することがある?


アビシニアン以外の猫でも凶暴化することはありますが、少し神経質気味なアビシニアンは、他の猫種よりも凶暴になりやすいと言われています。

引越しや出産といった生活環境の変化に伴って見られる嫉妬やパニックが原因のことが多いようです。
また、猫の嫌がる行為を続けたり、脳に病気があることも原因と考えられています。

まずは、凶暴化しないように

凶暴化をできるだけ防ぐため、いくつかの対策をご紹介します。

  • 引っ越しの際は、たとえボロボロであっても猫の毛布やおもちゃを捨てずに持っていく
  • 新入り猫や、人間の赤ちゃんを新しく迎え入れる際は、はじめは違う部屋で過ごさせ、徐々に慣らしていく
  • 引っ越しによる環境の変化や、新入りへの嫉妬でストレスを抱えないよう、意識して多めに遊んであげる
  • 猫の嫌がる行為はしない。特に、日中テレビをつけっぱなしにするなど、何気ない行為が実は猫のストレスになり得るので要注意。過度なスキンシップも控えよう。
  • 柑橘系の香りは猫にとって不快なので、香水やアロマの香りには気をつける。
  • 病気を早期発見するため、定期的に健康診断をする。

それでも凶暴化してしまったら

むやみに手を出すと咬まれたり引っ掻かれたりすることがあるため、愛猫が落ち着くまで放置するか、別の部屋に隔離することが推奨されます。それでも治まらない場合は、動物病院に相談しましょう。

まとめ


ここまで非常に多くのことを説明してきましたが、一度に全てを変える必要はありません。
しかし、一緒に暮らしている大切な家族が少しでも多くの幸せを感じられるように、愛猫に合った環境の整備が重要です。

アビシニアンがかかりやすい病気をよく理解して、予防や早期発見に努めましょう。

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