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コラム

飼育放棄が急増!コロナ禍で世界中の人々を癒やしたペットたち

千葉 綾 シェリー編集部

新型コロナウイルスが世界的に流行し始めてから3年以上が経ち、ようやく日常が戻ろうとしています。コロナ禍では、人々の不安や孤独感を埋めるために、世界中で多くのペットたちが新しい飼い主に迎えられました。

しかし、非常に残念なことに、世界にはコロナの終焉と共に飼育放棄されてしまうペットたちが数多くいます。今回は、そんなコロナと世界のペット事情について取り上げていきます。

癒やしを求めてペット需要が急増した「イギリス」


イギリスではパンデミックのさなか、急激なペット需要の増加が見られました。

イギリスのペット産業協会「UK Pet Food」の統計によると、2020年から2022年にかけて、犬は約900万頭から約44%増の1300万頭、猫も750万頭から60%増の1200万頭に飼育頭数が急増しています。うさぎなどの小動物も犬や猫ほどの増加ではありませんが、飼育数は増加しました。

特に2021年は国内だけでは供給が追いつかず、海外から多くの子犬や子猫が輸入されています。ペットやその関連製品の販売額も過去最高を記録し、ペット産業は大いに潤いました。

しかし、2022年に入ると、電気、ガス、食料品など生活に欠かせない物品の物価が高騰し、インフレ率は40年ぶりの高水準となる11%を超えました。するとペットのエサ代や医療費が払えなくなり、飼育放棄する人が続出したのです。
英国王立動物虐待防止協会(RSPCA)によると、2022年7月までに飼育放棄されたペットは、前年の同じ時期に比べ25%増加したそうです。

飼育数の増加に伴い動物福祉の向上が見られる「アメリカ」


米国動物虐待防止協会(ASPCA)の調査によると、アメリカではコロナ禍で5世帯のうち1世帯が犬や猫などのペットを飼い始めました。その多くはまだ飼い主と一緒に暮らしていますが、リモートワークから出社勤務への変更や物価の高騰による飼育費用の問題などを抱えている人も多くいます。

そんな中、2022年6月にニューヨーク州で「パピーミルパイプライン法案(Puppy Mill Pipeline Bill)」が可決されました。この法案は「ペットショップによる犬、猫、うさぎの販売を禁止する。里親探しを目的とする特定の団体が、犬や猫を所有する団体と協力することは許可される。」というものです。
この法律により、営利目的だけの小動物の取引が禁止され、保護された動物たちの里親探しが奨励されることになります。

パピーミルとは「子犬工場」を意味し、無責任で動物福祉に反する繁殖を行う悪質なブリーダーのことを指します。このような繁殖業者を規制する動きは、アメリカの他の州でも見られ、カリフォルニア州、イリノイ州、メリーランド州などではすでに同様の法律が制定されています。

ロックダウンとバカンスの弊害が大きい「フランス」


フランスでは約50%の家庭で何らかのペットを飼っています
そんなペット大国のフランスですが、コロナの影響で猫の不妊手術が例年通りに行えず、猫が増えてしまい、2021年の子猫の保護施設への引き渡しは2019年に比べて30%増加しました。

犬の場合はさらに深刻で、ロックダウン中に「犬の散歩」が外出理由として認められていたため、安易に犬を飼い始めた人が続出し、その後ロックダウンが解除されると飼育放棄が相次ぎました

かねてから、フランスでは夏のバカンス前にペットが捨てられることが多く、社会問題となっていました。フランスの動物保護団体の関係者は、その理由をバカンス先にペットを連れていくことが難しいためだと指摘しています。

そもそも、衝動的なペットの購入が飼育放棄の原因と考えられ、フランスの議会上院は2021年11月、動物の扱いに関する法律の改正案を可決しました。この法律の改正により、ペットショップでの犬や猫の展示や販売、インターネットによる犬や猫の販売は、2024年に禁止される予定です。

日本でも飼育放棄が起こっている


日本もコロナ前の2019年と2020年、2021年を比較すると、欧米ほど顕著に増えたわけではありませんが、犬や猫の新規飼育頭数は増加しています。

日本ペットフード協会の調査によると、2020年の新規飼育数(推計)はコロナ前の2019年比で、犬が18%増の41万6千頭、猫は16%増の46万頭でした。2021年も犬・猫ともに2019年を上回り、犬は13%増の39万7千頭、猫は24%増の48万9千頭が新たに飼われています。

飼育放棄の割合はデータとして出ていませんが、動物保護団体からはコロナが収まってくるにつれ、保護数も増加したという声が多く聞こえてきます。

最後に


今回は、日本と諸外国におけるコロナ禍のペット需要の増加や物価高騰の問題、各国で制定された法律などについてご紹介しました。残念ながら、今回取り上げた国以外でも世界情勢に翻弄されるペットたちが数多くいることは間違いありません。

このような問題に対して、自分に出来ることは何かをぜひ考えてみてください。ペットを衝動買いしようとしている人がいたらよく考えるように説得することや、SNSで動物福祉について投稿することもとても大切です。

一人ひとりができることは小さいかもしれませんが、同時に同じようにペットたちを心配している人も世界中にたくさんいます。多くの人が少しずつでも行動すれば、悲劇的なペットたちを生んでしまう世界を変えられるかもしれません。

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