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いぬしつけ

獣医師が教える子犬のしつけ①〜社会化期にやるべき5つのこと

相澤 啓介 獣医師

突然ですが、皆さんは犬のしつけといえば何を思い浮かべますか?「座れ」「伏せ」「待て」「お手」などのしつけは、確かに犬とのコミュニケーションにとっては大切ですが、意外と忘れがちなものがあります。

それは「社会化」です。

愛犬との生活を充実させるために、今回は犬の社会化について獣医師の視点から解説していきます。

犬における社会化って何?


社会化とは、犬が身の周りのあらゆるものに対して適応する力を習得することをいいます。

動物病院でも、成犬になって他の人や犬に攻撃したり、大きな音に過敏に反応したりして困っているという相談をよく受けます。もちろん、その子の性格にもよるところも大きいかもしれませんが、中には社会化がうまくいってないケースも見られます。

社会化が十分でないと、初めて会う人や犬、車などを必要以上に怖がる、インターホンや掃除機などの生活音に反応するなど、落ち着いて生活できなくなり、犬にも飼い主さんにもストレスがかかってしまいます。子犬のうちにしっかり社会化をすることが重要です。

犬のライフステージ

犬のライフステージは3つに分類されます。

① 幼犬期:生後18週齢まで
② 青年期:生後18週齢~2,3歳齢
③ 成犬期:3歳齢以上

さらに①幼犬期は下記の3つに分類されます。

(1) 新生児~生後2週齢
(2) 生後3週齢~13週齢頃
(3) 生後13週齢~18週齢

この中でも生後13週齢までの時期を「社会化期」と呼びます。通常はこの時期に、母犬や兄弟犬から遊びを通じて犬同士の会話を学ぶため、子犬の健全な成長にとって非常に重要な期間なのです。

動物販売業と社会化

現在日本では、生後56日未満の犬および猫の販売や展示を法律で禁止しており、子犬を迎え入れられるのは早くても生後8週齢頃です。

これは子犬の社会化を促すための法律ですが、いくつかの動物販売業では生後8週齢までに母犬や兄弟犬と引き離され、適切な社会化がなされないまま家庭にやってくる可能性があります。

社会化期を隔絶された世界で過ごした子犬は、いざ外の世界に出たときに衝撃を受けるでしょう。怯えてパニックになり、コミュニケーションの取れない相手に必要以上に攻撃的になるのも当然なのです。

成犬でも社会化トレーニングは可能なの?

成犬でも社会化トレーニングはもちろん可能ですが、社会化期の子犬と比較すると精神的な柔軟性が失われているため、困難であったり時間がかかってしまうこともあります。愛犬に余計な負担をかけないためにも、できる限り適正な社会化期にトレーニングを積むことが大切です。

社会化期に何をすべきか?

では、子犬の社会化はどのように行えばいいのでしょうか。いろいろなものに慣れさせるといっても、いきなりたくさんの刺激に触れさせるのは子犬にとってストレス以外の何物でもありません。

ここでは、子犬の社会化期にぜひやってほしい5つのことを紹介します。

社会化期にやるべきこと① 家に慣れさせる


お迎えしたばかりの子犬は、突然の環境の変化に戸惑っているはずです。

そのような状態で、早速いろいろなものに触れさせる必要はありません。
まずは家の中の環境に慣れてもらいましょう

社会化期にやるべきこと② 人に慣れさせる


動物病院の受診やペットホテルに預ける際にも、知らない人との接触は避けられません。人見知りのまま放っておくと、知らない人と接触するたびに愛犬にストレスがかかってしまいますので、 子犬の頃から家族以外のさまざまなタイプの人と会うことが大切です。

特に、男性、制服を着た人、メガネをかけている人を苦手としている犬は多いように感じます。友人などに家に来てもらったり、抱っこをしながら家の近くで触れ合うのがいいでしょう。可能であれば、少しだけおやつをあげてもらうのもいいかもしれません。

子犬の緊張の様子を観察しながら、無理のない程度に積極的に人と会わせてあげてください。

社会化期にやるべきこと③ 他の犬に慣れさせる


室内飼育の場合、意識しないと他の犬と触れ合う機会は減少してしまいます。しかし、生活の中で他の犬と会うことは意外と多いものです。社会化期に適切に犬に慣れさせておかないと、散歩中に犬に会うたびに吠えてしまったり、逃げようとしたりしてしまいます。

散歩に出るのはワクチン接種が完了してからになりますが、それまでの間に全く外に連れ出さないのはもったいないです。抱っこして近所を歩いたり、遠くから他の犬を見せたりすることはできます。ワクチン接種が完了した後は、散歩中に他の犬と遊ばせる時間を作ってあげましょう。

動物病院などが定期的に開催しているパピーパーティを利用するのも有効です。

社会化期にやるべきこと④ 環境に慣れさせる

場所に慣れさせる

子犬にとって目に見えるもの全てが好奇心の対象であると同時に、恐怖の対象でもあります。

特に散歩コースの途中にある商店、交通量の多い道路、踏切、公園、池などは早い段階で徐々に慣れさせることが必要です。いろいろなものを見せて、聞かせて、嗅がせて、触らせてあげましょう。

また、緊急時や旅行の際に車に乗ることも想定されますので、自家用車の中の環境にも慣れさせておきましょう。

音に慣れさせる

動物病院でよく相談されるのは、インターホン、花火、掃除機、ドライヤーの音に怯えるということです。これらは生活音の中でも比較的大きな音で、いきなり鳴ったら犬は驚き、威嚇したり怯えたりします。

音が鳴ると遊びや食事を中断させる犬は、音に敏感な性格であると考えられますので、小さな音から徐々に慣れさせることが大切です。

動画サイトでさまざまな音を聞かせることもできますので、利用してみてはいかがでしょうか?

パピーナーサリーによっては、社会化期にこのようなCDを常時流しながら、おもちゃ遊びをしたりご飯を食べたりして、音に慣らしていくこともあります。

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社会化期にやるべきこと⑤ ものに慣れさせる


散歩の際に使用するリードや首輪、キャリーケース、ブラシ、歯みがき用品に慣れさせることも重要です。動物病院を受診するときや、災害などで避難所で生活することになった場合、首輪やキャリーケースに慣れていない犬はとてもストレスを感じてしまいます。

あらゆる物事を体験させることで、受けるストレスを最小限にし、小さなことには動じないようにしてあげることが大切です。

まとめ


新しい家族を迎え入れてから社会化における適正時期の終了まで時間がありません。犬の成長は、人間とは比べものにならないほど速いのです。しかし、その分愛犬の適応力も早く、チャレンジとクリアを繰り返していくことで、愛犬との絆も一層深まるのではないでしょうか。

これから子犬をお迎えしようと考えている方はぜひ参考にして、犬にとっても人にとっても豊かな生活を送ってくださいね。

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