子犬の時期にやっておきたいしつけ第一弾「社会化」、第二弾「デンタルケア」に続いて、第三弾となる今回のテーマは、「ボディコントロール」です。
鼻先や尻尾など、犬にはあまり触られたくないと感じる体の部位があります。「ボディコントロール」とは、体のどこを触っても犬が嫌がらないようにするトレーニングのことをいいます。
精神的に柔軟な子犬の時期に体に触られることに慣れてもらうことで、その後のお手入れや動物病院での診察時に人間も犬もストレス減らすようにしましょう。
獣医師が教える子犬のしつけシリーズ、第一弾、第二弾はこちらから。
この記事の目次
ボディコントロールって?
ボディコントロールとは、犬が体のどこを触られても大丈夫なように訓練することです。
犬の弱点は鼻先や尻尾、四肢の先端などと言われています。他にも、順位確認の部位である腰回りを嫌う子もいます。
意図的であっても、そうでないにしても、これらの部位を触られても攻撃の抑制ができるようにすることが重要なのです。
ボディコントロールの必要性
日常生活において、犬が体を触られるケースは意外と多いもの。
ボディコントロールが十分でないと、犬も飼い主さんも常にストレスを感じてしまいます。
また、他の人に撫でられたときや動物病院で診察を受けるときに、人を咬んでしまっては大変です。実際に裁判になったケースもあります。
完全屋内飼育だからといってボディコントロールをおろそかにした結果、文字通り痛い目を見ることもあるのです。
いざというときの備えのために、ボディコントロールを始めてみましょう。
犬の体に触れる場面
では、犬が体に触られることに慣れていると、どのような場面で役に立つのでしょうか。
爪切り
定期的に爪切りを行わないと、爪が肉球に刺さってしまいます。
必ず行う処置となるため、足先への接触が犬にとってストレスにならないようにケアする必要があります。
動物病院での診察時
獣医師の立場から言わせていただくと、歯肉炎などの口腔内疾患や結膜炎などの眼疾患の診察の際、犬の顔周りに触れずに診察を行うことはできません。
確実で迅速な診断を得るためには、獣医師だけでなく、犬や飼い主さんの協力が不可欠となります。
避難所にて
災害などで避難した際に他の人に触られることがあるかもしれません。
体を触られることに慣れていないと、緊張感のある避難所で犬に過度なストレスがかかったり、他の人を咬んでしまうなどのトラブルになりかねません。
散歩中や他人が家に来たとき
散歩中に出会った人に触られたり、他人が家に遊びに来たとき、犬が触られることに慣れていないと、犬がストレスを感じたり、他の人を咬んでしまう恐れがあります。
病院や避難所などの特別な時に限らず、日常生活でも他の人に触られる可能性は十分あるのです。
ボディコントロールをやってみよう
では、ボディコントロールはどのように行えばよいのでしょうか。むやみに体を触るだけでは、犬に無用なストレスを与えるだけです。
正しく、無理のないボディコントロールを行いましょう。
徐々に慣れさせる
犬が触られることを嬉しいと思うように、地道に馴らしていきます。
いくら主従関係ができているとはいえ、苦手な部位を遠慮なく触ることは犬にとっても良い気持ちではないでしょう。
まずはお腹や背中、頭など触られても嫌がらない箇所を重点的に撫でて褒め、その流れで、弱点といわれている鼻先や足先を軽く触ってみて、触らせてくれたら褒めましょう。
犬を膝の上に乗せると、より安心感を与えるかもしれません。
犬は褒めて伸ばそう
犬にとって飼い主、すなわちリーダーに撫でられることは大きな喜びです。ボディコントロールをするときは、鼻先や足先を触らせてくれたらたくさん褒めてあげることで、犬は自然と、「触られたらいいことがある」と理解するようになります。
抵抗した場合に叩いたり大きな声を出すようなしつけをする人もいますが、それでは犬が「体を触られたら嫌なことが起きた」と誤解する可能性があります。
体を触られること自体をストレスに感じてしまうことに繋がるので、犬のしつけは褒めて伸ばすスタンスで臨みましょう。
上手な褒め方は?
犬を褒めるとき、「いい子だね〜」と言って撫でてあげるだけでも十分効果的ですが、もし、それでも犬が体を触られるのに慣れない場合は、おやつやフードも試してみましょう。
体を触ったり、触られることを許したときにすかさずご褒美をあげます。
もちろん、大量におやつなどを与えてしまうと栄養バランスが崩れたり、肥満の原因となるので注意が必要です。
方法はどうあれ、犬にとって楽しくて嬉しいことが起きることが大切です。
成犬でもボディコントロールはできる?
子犬の時期と比較すると時間がかかるかもしれません。しかし、成犬でもボディコントロールは十分可能です。
ただ、抵抗する際に咬む力も強くなっているため、触ったら嫌がる部位の見極めが重要です。
ケガをしないように注意し、犬との関係を悪化させないようにしてください。特に、柴犬などの日本犬は、足先や顔周りを急に触られたときに強い攻撃性を示す子が多い傾向にあります。
成犬の場合は、子犬の場合よりも焦らず、慎重にしつけを行うことをおすすめします。
まとめ
犬のしつけは、犬と人間の双方が楽しく行うことが重要です。遊びながら、上手に褒めながら、焦らずじっくり取り組むことを忘れないでください。
毎日の積み重ねが、犬自身や飼い主であるあなたを守ることに繋がります。ボディコントロールを通じて、犬との距離を縮めてみてください。