愛犬が突然ドッグフードを残すようになったら、飼い主としてとても心配になりますよね。「ドッグフードに飽きてしまったのかな?」「このまま食べてくれなかったらどうしよう…」と不安になる方も多いでしょう。
そんなとき、慌ててドッグフードを変えたり、トッピングを増やしたりしていませんか? 実は、その対応が、かえって「食べない」習慣につながってしまう可能性があります。
今回は、犬がご飯を食べなくなる原因と、その対策について紹介します。
この記事の目次
ご飯を食べなくなる主な原因
犬がご飯を食べなくなる原因としては、次のようなものが考えられます。該当するものがあるかチェックしてみてください。
- 病気
- 歯や口の痛み
- ストレス
- 環境の変化
- フードの鮮度
- フードの形状
- おやつの食べ過ぎ
- 暑さ
- 運動不足
- 発情期
- 加齢
これらに当てはまらない場合は、もしかすると「フードジプシー」が関係しているかもしれません。
フードジプシーとは
フードジプシーとは、なかなかご飯を食べてくれないペットのために、フードを次々と変えてしまう飼い主や、その状態を指します。
アレルギーや消化器系の問題があって、より良いフードを求める場合もありますが、今回取り上げるのは健康な犬の場合です。
フードジプシーをしていると、その「食べない癖」はなかなか改善しにくくなります。
フードジプシーのデメリット
愛犬がご飯を食べないからと、より良いフードに変えていく行為は一見悪くないように思えます。しかし、フードジプシーには次のようなデメリットがあります。
- 食べムラや偏食が習慣化する
- 食べる量が安定しないため、必要な栄養を十分に摂れないことがある
- 急なフードの切り替えで、消化器トラブルを起こしやすい
- 飼い主の経済的・時間的な負担が増える
- 本当の不調を見逃すリスクがある
特に「本当の不調を見逃すリスクがある」点には注意が必要です。ご飯の食いつきが悪い状態が続くと、飼い主がそれに慣れてしまい、病気などで食べられなくなったときに早期に気づけない可能性があります。
だからこそ、健康なうちから食習慣を整え、安定してご飯を食べられるようにしておくことが大切です。
フードジプシーになってしまう理由
では、なぜフードジプシーになってしまうのでしょうか。実は、「食べないから…」と別のフードを出しているうちに、こんな悪循環に陥っているかもしれません。
- 犬がご飯を残す
- 飼い主が心配して、違うドッグフードに変える
- 犬は「お!美味しいものに変わったぞ!」と食べる
- 「残せば違うフードが出てくる」と学習する
- またご飯を残す
基本的には、この繰り返しです。
このようにして、頻繁にフードを変えることを繰り返していると、いつまで経っても食べてくれるようにならず、必要な栄養を十分に摂れなくなる恐れがあります。
成長期後に起こりやすい
子犬から育てて成長し、1歳前後(犬種によっては1歳半〜2歳頃)になる頃には、成長が緩やかになります。それに伴い、必要な食事量も少しずつ減っていきます。
これは自然なことなのですが、そのタイミングで「なんで食べないの?」と不安に思い、フードを変えたり工夫を重ねたりしてしまう飼い主さんも少なくありません。
その結果、「残せば、もっと美味しいものがもらえる」と犬が学習し、フードジプシーが始まってしまうことがあります。
フードジプシーをやめるには
フードジプシーをやめて同じフードをきちんと食べ続けさせるには、以下を意識しましょう。
フードを出しっぱなしにしない、時間を決めて片付ける
食べないからといってフードを出しっぱなしにしておいたり、そのまま一日中放置してしまう方もいるのではないでしょうか。「いつでも食べられる」と思うと、なかなか食べてくれないこともあります。
そのため、食事の時間と回数を決め、食べても食べなくても10分〜20分ほどで片付けてしまうことをおすすめします。そうすることで、「食べられるのはこの時間だけ」と犬が学習し、食事への集中力が高まりやすくなります。
フードを残しても変えない
「かわいそう…」と心が折れてしまい、またフードジプシーをしてしまいそうになる方もいると思いますが、ここが耐えどきです。たとえ残したとしても、回数や時間帯、与える時間の長さ、そしてペットフードの種類を変えずに、同じルールを一貫して続けてください。
人間の食べ物を与えない
人間の食べ物は犬用フードより味付けが濃いものが多く、犬が好んで食べる傾向があります。しかし、塩分・糖分・脂肪分が過剰に含まれることも多いため、犬の食べ物としては適していません。
嗜好性の高い人間の食べ物を与えていると、犬が自分のフードを食べなくなる恐れがあります。犬の健康と食習慣を守るためにも、人間の食べ物は与えない方が良いでしょう。
食事を工夫する
フードをお湯でふやかしたり、電子レンジで軽く温めたりして香りを立たせると、犬の嗅覚を刺激して食欲がわきやすくなります。また、味付けしていない肉の茹で汁や、体質に合う場合は無糖ヨーグルトを少量トッピングするのも効果的です。
ただし、あくまで「少量」にとどめ、トッピングが主食にならないように注意しましょう。電子レンジで温めた場合は、与える前に熱すぎないか必ず確認してください。
運動量を見直す
適度な運動はエネルギーを消費し、自然にお腹を空かせることで食欲を増進させる効果があります。毎日の散歩時間を少し長くしたり、ボール遊びなどの遊び時間を増やしてみてください。
ただし、犬種や年齢、体力に合わせて無理のない範囲で行うことが大切です。持病がある場合や体調に不安がある場合は、運動量を増やす前に獣医師へ相談すると安心です。
病院に行った方がよい場合
犬が自分のご飯は残すのに、おやつや人間の食べ物には興味を示し、元気や排泄物に異常がない場合は、しばらく様子を見てもよいでしょう。
ただし、次のような状態が見られる場合は、早めに動物病院を受診した方が安心です。
- 全くご飯を食べず、おやつも口にしないとき
- 嘔吐や下痢などの症状を伴うとき
- 元気がないとき
- 水を飲む量が極端に増えたり減ったりしたとき
- ヨダレが多い、強い口臭があるなど口腔トラブルがあるとき
- 子犬・高齢犬・持病がある犬
食欲不振の原因は、フードジプシーだけでなく病気や体調不良による場合もあります。少しでも不安を感じたら、早めに動物病院を受診することをおすすめします。
健康上の問題がないと確認できてから、ご飯を残す行動への対策をとるようにしましょう。
フードジプシーを乗り越えるために
実は筆者の実家でも、フードジプシーをしていました。愛犬を想う気持ちから、「美味しいものをあげたい」、「より良いものを食べて欲しい」と思い、次々にフードを変えてしまう気持ちはよくわかります。
ですが、それを繰り返していると、なかなか改善しません。犬は「今のご飯が嫌いだから食べない」のではなく、「残せばもっと美味しいものが出てくる」と学習してしまっている場合が多いのです。
この対応は厳しく感じられるかもしれませんが、愛犬の健康を考えてあえて厳しく接するのも愛情のうちです。もちろん、不安な場合は動物病院で健康を確認してから取り組むようにしてくださいね。