皆さんは、猫にも利き手があることをご存じでしょうか?
私たち人間が、ご飯を食べたり、物を持ったりする時に使う「利き手」。実は、四本足で歩く猫にも、遊んだり顔を洗ったりする際に使いやすい「利き手」があるのです。
この記事では、猫の利き手とは何か、右利きと左利きでどのような違いがあるのかを説明します。最後に、利き手の見分け方もご紹介しますので、ぜひ皆さんの愛猫が右利きか左利きかを調べてみてください。
この記事の目次
猫の利き手の研究
猫はそもそも四足歩行であり、私たち人間のように道具を使うことはありません。そのため、猫の飼い主であっても、利き手があることを知らない方も多いのではないでしょうか。
猫の利き手についての研究が行われたのは、アイルランドのクイーンズ大学です。研究では、猫が日常生活の中で右手と左手のどちらを主に使うかを観察しました。
具体的には、物を取ろうとするとき、トイレに入ろうとするとき、階段を上り下りするとき、そして物を飛び越えるときなど、どちらの手を先に使うかを記録し、そのデータをもとに統計解析を行いました。
<論文はこちら>
筆者:Louise J. McDowell,Deborah L. Wells,Peter G. Hepper
タイトル:Lateralization of spontaneous behaviours in the domestic cat, Felis silvestris
掲載学術誌:Animal Behaviour(2018年)
リンク:https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0003347217303640
猫の利き手は性別で違う?
研究の結果、73%の猫が食べ物を取るときに利き手を使っていることがわかりました。また、階段を下りるときには70%の猫が利き足を使い、トイレに入る際には66%の猫に利き足があることが判明しています。
さらに、猫の性別によって利き手に偏りがあり、オスは左手、メスは右手を使う傾向があることが明らかになりました。
どうして性差があるの?
利き手の性差は人間にも見られ、人間の男性は女性と比べて左利きの割合が高くなります。
この論文の著者の一人である心理学者デボラ・ウェルズ氏は、この違いは性ホルモンに関連していると考えています。ただし、その具体的な仕組みや原因については、まだ解明されていないとのことです。
猫の利き手は性格にも関係している!
この猫の利き手は、猫の性格にも影響しているとされています。
利き手はその反対側の脳によって制御されているため、右利きの猫は左脳が、左利きの猫は右脳が優位である可能性が高いと考えられます。
ウェルズ氏によると、左脳は主にポジティブな感情の処理を、右脳はネガティブな感情の処理を担っているため、左利きの猫は右利きの猫よりも強い恐怖反応を示し、ストレスの多い状況への対処が苦手になる傾向があるそうです。
もしあなたの愛猫が左利きであれば、ストレスを感じやすいのかもしれません。
猫の利き手の見分け方は?
自分の猫の利き手はどちらなのか、気になりますよね。
猫の利き手を見分ける方法はとてもシンプルです。クイーンズ大学の研究で行われたように、生活の中でどちらの手を先に使うか、先に出すかを観察し、記録するのです。
具体的な方法としては、次のような行動に注目してみましょう。
- 狭いところのものを取ろうとするとき
- トイレに入ろうとするとき
- 階段を上り下りするとき
- 物を飛び越えるとき
- おもちゃで遊ぶとき
このように、日々の行動に着目することで、愛猫の利き手がどちらなのかを判別できるでしょう。もちろん、性別からも大まかに絞り込むことができます。
複雑な動作ほど利き手を使う
単純な行動だけではどちらが利き手か判断できないため、観察を行う際には前足を複雑に使う動作を選ぶのが良いでしょう。例えば、瓶の中におやつを入れ、猫がどちらの手で取ろうとするかを観察するなどといった方法がおすすめです。
できるだけ多くのデータを集めることで、利き手がどちらかをより明確に判断できますので、1週間から1ヶ月ほど猫の行動に注目してみましょう。場合によっては、動画で撮影する方がわかりやすいかもしれません。
利き手のない猫もいる
一生懸命観察しても、両利きだったり利き手のない猫もいます。また、これらの観察から得られた結果は必ずしも正確ではないため、参考程度に留めておきましょう。
幼少期はわかりにくい
人間と同じように、猫の利き手は成長するにつれて決まります。そのため、幼少期には判断が難しい場合があります。子猫を飼っている方は、ある程度成長した後に試してみてください。
まとめ
今回は、猫の利き手についてご紹介しました。猫に利き手があるという研究結果でしたが、注意深く観察しないと気づくのも難しいでしょう。
しかし、猫の利き手を知ることで、愛猫がストレスを感じやすいかどうかを調べられます。愛猫が過ごしやすい環境を作る上でも、ストレスの感じやすさは一つの目安となるため、ぜひ参考にしてみてください。
もちろん性格には個体差があるため、利き手だけで全てを判断することはできません。利き手の判定は、あくまで愛猫のことを理解するための一環として行うことをおすすめします。