世界一民主的な野生の犬!?リカオンの「くしゃみ投票」とは

2021.10.06
世界一民主的な野生の犬!?リカオンの「くしゃみ投票」とは

みなさんは、野生の犬である「リカオン」という動物をご存知ですか?

見た目はハイエナにも似ていますが、ハイエナはジャコウネコ科に近い「ハイエナ科」に属するのに対し、リカオンはペットの犬と同じ「イヌ科」に属します。

そんなリカオンは、なんと「くしゃみ」による投票で群れの決めごとを行う、とても民主的な犬なんです。

今回の記事では、リカオンという動物について、その生態やくしゃみの謎を詳しく解説していきます。

この記事の目次

リカオンってどんな動物?

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リカオンは、アフリカ大陸に生息する、野生の犬です。

かつては、砂漠と熱帯雨林以外のかなり広い範囲で生息していましたが、人間の生活圏が広がったことで住処を失ったり、家畜を襲うという理由で銃殺されたりした結果、個体数が著しく減少し、今では国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストに絶滅危惧種として登録されています。

基本基本情報

  • 分類:哺乳綱食肉目イヌ科リカオン属
  • 学名:Lycaon pictus、英名:African wild dog
  • 分布:アフリカ大陸全土
  • 体長:約76~102cm、体高:約60cm、体重:約25kg
  • 体の特徴:耳は丸くて大きい。白地に黒や黄褐色、灰色などの斑紋をもつ。
  • 足の速さ:時速50〜70キロ

群れで行動する

リカオンは、オスとメス、子どもたち10頭前後で構成される「パック」という群れで暮らしています。大きい群れでは、40~60頭が集まることもあるようです。

仲間と協力し合う意識がとても高く、怪我をした仲間を見捨てないことや、後ほどご紹介するように、くしゃみによる投票で物事を民主的に決めることなどで知られています。

また、オスとメスの力関係に差はなく、狩りも子育ても共同で行います。メスがパックのリーダーを務めることもあるようです。

狩の名手!

リカオンの狩りは、群れの仲間が協力して行います。
狩りの成功率は他の肉食動物に比べても高く、ヒョウで15~40%、ライオンで25~30%、チーターで40~60%程度なのに対し、リカオンは60%以上の成功率を誇ると言われています。

このことから、「アフリカの狩猟犬」という愛称が付いています。

リカオンの「くしゃみ投票」とは

引用:The New York Times『Wild Dogs Sneeze to Hunt | ScienceTake』
https://youtu.be/sVxKlsfi73g

リカオンのくしゃみはもともと、他の動物がするのと同じように、鼻に違和感を感じたときなどに行う仕草だと考えられていました。

しかし、アメリカ・イギリス・オーストラリアの研究チームが詳しく観察を続けたところ、リカオンの群れは狩りを始める前に集会を開き、くしゃみによって狩りの合意形成をしていることが分かってきたのです。

つまり、狩りに賛成するリカオンがくしゃみをし、その数が十分であることが確かめられて初めて、群れでの狩りがスタートします。

もともと仲間を大事にするリカオンは、さらにくしゃみによる投票で民主的に狩りの成否を決めているからこそ、「アフリカの狩猟犬」とも呼ばれるほど高い狩りの成功率を保っているのかもしれませんね。

ペットの犬のくしゃみはどうなの?

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同じイヌ科のリカオンのくしゃみの意味が分かったら、「じゃあペットの犬のくしゃみも賛成の意思表示なの?」と思うかもしれません。

そうでないとは言い切れませんが、多くが1〜3匹で暮らしているペットの犬が、くしゃみによって民主的な投票を行っているとは考えにくいです。

ペットの犬がくしゃみをするのには、次のような理由があると考えられています。

1. アレルギー

ハウスダストや、スギ・イネ科の植物などがアレルゲンとなって、犬でもくしゃみや鼻水が出ることがあります。

2. 異物の刺激

食べかすや植物の一部など、異物が鼻の穴に入り込んでしまい、それを出すためにくしゃみをすることもあります。ほとんどの場合、くしゃみは一時的なもので、異物が外に出てしまえばおさまります。

しかし、中には異物がなかなか外に出ずにくしゃみが止まらない状態になったり、鼻粘膜に炎症が起きることもあります。こうなってしまったら動物病院で異物を取り除かなくてはいけません。

3. 歯周病

歯周病は、犬において非常によく見られる病気です。歯周病とくしゃみは一見関係がなさそうですが、特に、上顎の犬歯で歯周病が進んだ場合、歯根の尖端に細菌感染が達することで鼻腔内の炎症が起きやすくなります。

さらに症状が進行すると、歯を支えている骨が溶け、鼻腔との間に穴が開いてしまいます。この状態を「口鼻瘻管(こうびろうかん)」と呼び、この穴を通じて、口から食べたものが鼻腔に入り込んでしまうのです。結果、鼻腔内で異物による刺激が常に起こり、くしゃみや鼻出血が出るようになります

いずれにせよ、犬が連続してくしゃみをしている場合は、何らかの異常が生じている可能性が高いため、できるだけ早く動物病院を受診しましょう。

まとめ

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野生の犬であるリカオンは、群れの仲間との協調をとても大事にする動物です。

仲間とコミュニケーションを積極的にとり、民主主義的な社会を築いている動物には、他にもゴリラやミツバチなどがいますが、リカオンのようにくしゃみによって意思表示をする動物はなかなかいません。

ただし、同じ犬の仲間だからといって、ペットの犬のくしゃみが「狩りに行きたい!」という意思の表れと考えてはいけません。

アレルギーや異物の存在、歯周病の可能性を考え、長引くようなら早めに動物病院に連れて行きましょう。

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