異常な暑さもようやく落ち着き、犬にとっては活動がしやすい季節になってきました。真冬になる前に愛犬と一緒に旅行をしようと考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、実際にこれまで愛犬と旅行をしたことがある方の中には、旅行に行く前に思い描いていた、愛犬が楽しそうに走ったり遊んだりする姿とは全然違い、知らない場所や環境に緊張し、楽しむとは程遠い旅行になった経験がある方もいると思います。
そこで今回は、飼い主さんはもちろん愛犬も旅行をしっかり楽しむために日頃から行っておきたい「慣れ」を5つ紹介します。
この記事の目次
旅行でありがちな想像と違う愛犬の行動
2021年にわんちゃんホンポを運営する株式会社ピーネストジャパンが304人の犬の飼い主を対象に行った「愛犬と旅行」に関するアンケート調査では、51.6%(157人)が必ず愛犬を旅行に連れて行くと回答し、かつ年に1回以上愛犬と旅行に行くと回答した人は、98.3%という結果になりました。
以上のことから、多くの方が愛犬と共に毎年旅行をしており、愛犬との旅行が珍しいものではなくなっていることがわかります。
しかし、旅行に慣れていないと愛犬が楽しめず、飼い主さんもそんな愛犬を見てあまり良い思い出にならなかったということも少なくないはずです。
具体的に慣れない旅行で愛犬にありがちな行動をご紹介していきます。
参考:わんちゃんホンポを運営する株式会社ピーネストジャパンによる犬と暮らす方への旅行に関する意識調査より
車で落ち着かない
愛犬との旅行では車移動が多くなると思いますが、車での長距離移動に慣れておらず、緊張している、落ち着けない、車酔いをするなどの反応が見られやすいです。
また、サービスエリアなどには多くの車や人がいて怯えたり、高速道路に慣れていない子であれば早いスピードが出ると緊張してしまう場合もあります。
排泄できない
宿泊先はもちろん、サービスエリアなどの移動途中にも適宜排泄をして欲しいところですが、初めて行く場所や色々な音がしたり、人や車が行き来する場所では排泄ができないことも少なくありません。
宿で落ち着かない
宿泊先でも落ち着けず、飼い主さんが動くと離れられずに後を着いて歩いたり、飼い主さんの姿が見えなくなると吠えるなどの行動が見られます。
また、宿泊先に用意されている犬専用の水の器ではうまく水が飲めないこともあります。特に普段給水機で飲んでいる子はお皿になるとうまくお皿から水が飲めなかったり、慣れていないお皿が恐くて近づけないこともあります。
眠れない
疲れているはずなのに知らない場所では落ち着けず、夜間も眠れずに飼い主さんのそばをウロウロしたり、鼻鳴きをして朝まであまり眠れないという子もいます。また、普段家にいると聞くことがない音が聞こえたり、宿泊している他の犬の声に反応して吠えることもあります。
これによって飼い主さんも熟睡ができず、翌朝にはみんな寝不足なんてことも考えられます。
下痢などの体調不良
長めの旅行の場合、旅行中または自宅に戻ってきたら軟便や下痢などの体調不良が見られることがあります。
慣れない環境に身を置いたことなどによるストレスや疲れが原因であることが多いですが、宿泊先で出された食べ慣れていない犬用ごはんなどが影響していることもあります。
旅行を楽しむためにやっておきたい5つの慣れ
日頃から準備をしておくことで、旅行の際にも活かせる慣れを5つ紹介します。
1. クレートに慣れる
クレートが愛犬にとって安心して落ち着ける場所、眠れる場所、疲れたら自分で入って休みたい場所にしておきましょう。どこにいてもクレートに入っていれば安心できるくらいになると、旅行先など初めて行く場所でも落ち着いて過ごしやすくなります。
ただし、クレートが愛犬にとって安心して落ち着ける場所になるまでには多くの時間が必要になる場合がほとんどです。日頃から愛犬が好きなおやつを使ってクレートトレーニングを行いましょう。
クレートトレーニングのやり方
クレートトレーニングは、クレートそのものに入る練習とクレートの中で落ち着く練習のふたつがあります。
①クレートに入る練習として、愛犬が見ている時または見ていない時にクレート内におやつを置き、そのおやつを目掛けて愛犬が自らクレートに全身入れるように何度も繰り返します。全身入れない場合はクレートの手前におやつを置いて、徐々に全身入れるように目指します。
②愛犬がクレートに入ったらフセをしてもらい、おやつをあげます。扉を2~3秒閉めて、また扉を開けていつでも出られる状態にします。(扉を閉める時間は30秒程度まで徐々に伸ばしていきます)
③十分な発散をして今にも寝そうなタイミングでクレートに入ってもらい、扉を閉めて少しの時間でもクレートで眠れるようにします。周りの環境も静かで落ち着いた状態にし、愛犬が興奮しないようにします。
愛犬が寝たら起きる前にクレートの扉を静かに開けておき、愛犬が目を覚ましたらすぐに出られるようにしておきます。
クレート内バスタオルや冬はブランケットなどを敷くのもおすすめです。ただし、愛犬にタオル類を噛む癖がある場合には、誤飲防止のため敷くのはやめるか様子を見ながら使用しましょう。
④ ③のクレートで眠れる、または落ち着ける時間を徐々に伸ばしていき、さらに、周りの状況に関わらずクレートに入れば眠れる、または落ち着けるようにしていきます。
ポイント
各手順を焦らず何度も繰り返すことが大切です。数回できたからといってすぐに次の手順に進むと、クレートに対する警戒心が強くなり失敗の原因になります。
2. 色々な場所に行く
いつも同じ場所だけをお散歩していると、初めて行く場所への警戒が強くなります。違う道を歩いたり、普段より少し遠い公園でもいつも通りに歩いたりと、楽しむ経験をたくさんさせてあげましょう。
愛犬と入れるお店などにも行って、周りに犬がいる環境で落ち着く練習をすることもおすすめです。
3. 音に慣れる
普段生活していて聞く音に慣れることはもちろん大切ですが、あえて普段はなかなか聞くことがない音にも慣れておくことで、旅行先などで聞き慣れない音を聞いた場合にも警戒しにくくなり効果的です。
音慣れのやり方
音慣れに役立つのがYouTubeです。なかなか生の音を練習したいタイミングで使用するのは難しいため、YouTubeで「車 音」「犬 吠え声」「工事 音」など慣れたい音を検索して行いましょう。
①小さな音量で具体的な音を2〜3秒流します。この際、音を流す前から流し終えるまで愛犬にはおやつをあげ続けます。おやつをあげ続ける以外にも、ごはんを集中して食べている時間や飼い主さんと遊んでいる時など、何かに集中しているタイミングが作れればそれでもOKです。
②音を流す時間を徐々に伸ばしたり、音量を少しずつ大きくしていき、その音が聞こえても恐がったりせずに全く気にしないようになるまで行います。
ポイント
音量や音を流す時間は、愛犬が気にしないレベルで行います。音が流れることでそれまでの動作が止まったり、音を気にする様子がある場合は音の刺激が強すぎる証拠です。それまでの状態をキープできるレベルの音量や長さで行うことがポイントです。
4. 車に慣れる
①車内にいることで強い緊張が見られる場合は、まずは停車した車内にいることに慣れていきます。
外のニオイがした方が落ち着ける場合は、窓を少し開けたり、お気に入りの落ち着けるベッドなどがあれば車内に持っていきます。また、クレートで落ち着ける場合にはクレートを使ってみるのもいいでしょう。車内でおやつが食べられて、車酔いもしない場合には、おやつを与えて車内に良いイメージを付けていくこともできます。
②車内に慣れたら短い距離から少しずつ移動距離を伸ばします。可能であれば運転する人以外にもう一人愛犬のそばにいられる人も同乗し、少しでも安心感を与えられるようにしましょう。
③乗っていられる時間が増えてきたら公園に行って楽しい時間を過ごして帰ってくるなど、車移動の後に楽しい経験をすることで良いイメージを付けていきましょう。こうして少しずつ移動距離も伸ばしていき、公園などで疲れたあとには車内で眠れる経験ができるとなお良いです。
車酔いがある場合には、病院で酔い止めを処方してもらったり、残念ですが愛犬のためには車移動は控えるという選択をすることも必要です。
5. トイレトレーニング
室内でも屋外でも排泄ができるようにしておきましょう。また、「ワンツー」などの合図で排泄ができるようにしておくと初めて行った場所でも排泄がしやすくなります。
トイレ時の合図の付け方
ここでは「ワンツー」を合図とした場合で説明します。
①愛犬がおしっこをし始めたら小さな声で「ワンツー」と声掛けをします。このステップを何度も繰り返します。
②愛犬がトイレに入ったタイミングや屋外であれば普段しやすい場所で「ワンツー」の合図を小さな声で言います。もし、その後に排泄ができたらおやつやフードなど愛犬が喜ぶものをあげます。このステップを何度も繰り返します。
ポイント
「ワンツー」の声掛けは大きな声や強い語気にならないように注意しましょう。その声に愛犬が驚いたり恐がってしまった場合は、排泄に嫌なイメージが付き、今までできていたトイレができなくなってしまう可能性があります。また、おしっことうんち両方で合図を付ける場合には、それぞれ別々の合図にした方がわかりやすいです。
まとめ
旅行の際に慣れておきたいことはたくさんありますが、慣れるまでには時間がかかるかもしれません。しかし、これらのトレーニングは旅行時以外にも役立つ場面はたくさんあるため、愛犬のためにもしっかり慣れさせてあげることが大切です。
他にも、移動中に水分摂取の時間を確保することや、他の犬との咬傷事故、知らない土地での脱走、食べ慣れていないものの摂取による下痢など、気を付けたいことはたくさんあります。
愛犬や飼い主さんにとって残念な旅行にならないよう、しっかりと準備をし、素敵な時間を過ごしてください。