ペットも人間と同じように、年を取ると心臓や腎臓の病気や腫瘍にかかりやすくなります。
年老いた愛犬や愛猫に病気が見つかった時に、手術や入院、継続的な治療を提案されると、「高齢なのにどこまで治療すべきなのだろうか?」と治療の線引きに迷う飼い主さんは少なくありません。
一方で、「治療しないことを選んだら、見捨てることになるのでは」と罪悪感を抱く方もいるでしょう。
この記事では、シニア犬・猫の治療方針を決める際の考え方や、延命治療とQOLのバランス、セカンドオピニオンについて解説します。シニア期のペットと暮らしている方はぜひ参考にしてみてください。
この記事の目次
シニア犬・猫の治療方針に「ひとつの正解」はない

獣医師が治療方針を提案するとき、年齢だけで決めているのではありません。
同じ年齢でも、健康状態や病気の種類、進行度はそれぞれ異なります。高齢であることは治療方針を左右する要素のひとつですが、「◯歳以上だから手術はできない」と年齢だけで一律に決まるわけではありません。
反対に、医学的には可能な治療でも、その子にとって負担が大きい場合には別の方法を検討することもあります。
飼い主さんも「治療の目的」を確認する
治療を提案されたとき、「やるか、やらないか」だけを考えてしまうと、なかなか答えが出ないことがあります。
まずは治療の目的や期待できる効果、負担について獣医師に確認しながら、一つずつ整理していきましょう。
治療には、病気を治すことを目指すものだけでなく、
- 病気の進行を遅らせる
- 生存期間を延ばす
- 痛みや吐き気などの症状を軽減する
- 食事や排泄など日常生活を維持する
といったさまざまな目的があります。
たとえば手術を受ければ完治が期待できる場合と、病気そのものは治らないものの症状を軽減するために行う場合では、手術を受ける意味が異なります。
獣医師から治療を提示されたら、「この治療をすると何がどの程度よくなると期待できますか?」と聞いてみましょう。
治療を受けない場合の経過や他の選択肢も聞いておく
愛犬や愛猫の今後を聞くのは少しつらいかもしれません。しかし、ペットが亡くなってしまったあとで「ほかにできることはなかったのか」と後悔しないためにも、治療を選ぶときには選択肢を知っておくことが大切です。
「治療をしなかった場合にはどうなるのか」「ほかにどのような選択肢があるのか」を確認しておくと、それぞれの治療のメリットやデメリットを比較しながら考えやすくなります。
飼い主さんが大切にしたいことも伝える
飼い主さんが愛犬・愛猫にどのように過ごしてほしいかという希望を、獣医師にはぜひ遠慮なく伝えてください。
- できる限りの治療は受けさせたい
- できるだけ長く一緒にいたい
- 通院が苦手な子なので自宅で過ごす時間を大切にしたい
など、希望は家庭によって異なります。
治療を受けることで、症状が改善しその子らしく過ごせる時間が長くなるケースもある一方で、頻繁な通院や入院が必要になったり、副作用や処置による負担が大きくなったりすることもあります。その子と家族に合った治療方針を獣医師と一緒に考えていきましょう。
治療とQOLはどちらを優先すればいい?

シニア犬・猫の治療を考えるうえで避けて通れないのがQOLという考え方です。
QOLとは「生活の質」を意味します。単にどれだけ長く生きられるかだけではなく、その期間をどのように過ごせるのかにも目を向けます。
たとえば、
- 食事を楽しめる
- よく眠れる
- 自力で排泄できる
- 散歩やひなたぼっこなど好きなことを楽しめる
- 飼い主さんとのコミュニケーションがとれる
- 強い痛みや呼吸の苦しさがない
といった様子は、QOLを考える目安になります。
大切なのは「治療するか、しないか」という二択ではなく、治療によって得られるものと負担の両方を考えることです。
治療方針に迷ったらセカンドオピニオンも選択肢に

セカンドオピニオンとは、今かかっている動物病院以外を受診し、診断や治療方針の意見を求めることです。
例えば、次のような場合には別の獣医師に意見を聞くことを検討してもよいでしょう。
- 大きな手術を提案され、受けるべきか迷っている
- 長く治療を続けているが改善がみられない
- 説明を聞いても治療方針に納得できない
セカンドオピニオンは「主治医を信用していない」という意味ではなく、別の視点から病気や治療について意見を聞くためのものです。セカンドオピニオンを受けたあと、再びかかりつけの動物病院で治療を続けることもできます。
かかりつけの獣医師には、「大きな決断なので、ほかの先生の意見も聞いたうえで決めたい」と率直に伝えて構いません。
今までに受けた検査の結果や画像データなどがあると、次の病院での検査の手間や費用を減らすこともできるので、データをもらえるよう相談してみてください。
治療費に上限があることも獣医師に伝えていい

経済的な事情を獣医師に話すことに抵抗を感じる方もいますが、費用も治療方針を決める大切な条件のひとつです。
「毎月この程度までなら治療を続けられる」「入院は難しいので通院でできる方法を考えたい」など、事情を伝えて相談してみましょう。
ペット保険の補償内容を確認しておく
人の医療と違ってペットの医療には公的な医療保険制度がなく、かかった費用は原則として全額自己負担です。そのため、民間のペット保険に加入している飼い主さんも増えてきています。
シニア期のペットを飼っている飼い主さんに確認していただきたいのは、保険がいつまで適用されるかという点です。ペットが亡くなるまで補償が続くタイプもあれば、年を取ると更新ができなくなる保険もあります。
ペット保険の条件は、保険会社によって大きく異なります。加入しているペット保険の契約内容や補償範囲をあらためて確認しておきましょう。
「治療をしない」「治療をやめる」ことも治療方針のひとつ

病気そのものを治すことが難しくなったとき、積極的な治療をしない、あるいは途中でやめる選択を飼い主さんがしなければならない場合もあります。
その場合は、
- 痛みを和らげる
- 吐き気や呼吸の苦しさを抑える
- 食べられるものを与える
- 排泄をサポートする
- 自宅で安心して過ごせる環境を整える
など、苦痛を減らして穏やかに過ごすことを目的とした緩和ケアをおこないます。
具体的には、鎮痛薬や吐き気止めなどの薬を使ったり、酸素投与で呼吸の苦しさを軽減したりしながら、ペットに残された期間を快適に過ごすことを目指します。
決断したあとに自分を責めてしまうときは
飼い主さんの中には、あとになって「治療を続けなかったから」「もっとできることがあったのでは」と自分を責めてしまう方もいます。
治療方針はその時点で分かっている情報をもとに、その子にとって何が大切なのかを考えて決めていくものです。どの選択をしても、迷いや後悔が残ることもあります。
だからこそ、一人で答えを出そうとせず、病気の見通しや治療のメリット・デメリットを獣医師と十分に話し合いながら、「この子にどのように過ごしてほしいか」を考えていきましょう。
まとめ

シニア犬・猫の治療方針には、「高齢だから治療しない」「できる治療はすべて行う」といった、ひとつの正解があるわけではありません。
病気の状態や治療によって期待できる効果、体への負担、QOL、家族の生活や費用面などを踏まえながら、その子にとって何を大切にしたいのかを考えていくことが重要です。
治療方針に迷ったときは、飼い主さんだけで答えを出そうとせず、今の気持ちや不安、希望を獣医師に伝えてみましょう。治療を続けることも、方針を変えることも、どちらも愛犬・愛猫のことを大切に考えたうえでの選択です。
その子らしい時間を少しでも穏やかに過ごせるよう、獣医師と一緒に納得できる方法を探していきましょう。


































